現代日本画の秀作を鑑賞できる「成川美術館」。文化勲章受章画家・山本丘人の代表作や平山郁夫、堀文子、岡信孝、牧進などの作品が約4200点所蔵されています。年に3回の展示替えを行っており、季節にあわせた名画を楽しめるのが特徴です。

館内では絵具も展示。日本画では、身近なものを色材にしてきた古来の名残から、鉱石を原料とした天然岩絵具と新彩岩絵具、土を原料とした水干絵具などが使用されています。

この美術館のもうひとつの見どころは、展望室から見える絶景。天気の良い日は、芦ノ湖の向こうに富士山を望めます。

展望室のすぐ横にあるのがティーラウンジ「季節風」。お店に入ってすぐに心奪われるのが、赤と黒の印象的な配色のインテリア、そして大きな窓に広がる風光明媚な景色。展望室同様、眺望を堪能できます。

美術館内にあるティーラウンジだけあって、器にもこだわりが。

アイスクリーム（抹茶・バニラ・白桃 各600円）には、ガラス工芸家 石井康治の作品を使用。季節ごとに4種類の器を揃えています（写真は冬バージョン）

抹茶セット（1,100円）の茶碗は、新進気鋭の陶芸家 三上亮の作品です。上生菓子は小田原の老舗「盛月堂総本舗」のもの。色味のとおり、さわやかな味わいが印象的な一品でした。

青い色の富士山ビール（950円）には山をかたどったグラスを使用。富士山を眺めながら飲む一杯は最高です！

そのほか、ホットサンドや厚切りトーストなどの軽食メニューもあるので、ランチタイムに利用するのもよさそうです。

成川美術館を堪能した後は、徒歩で元箱根港へ。箱根海賊船に乗って桃源台へ向かいます。

船は、写真左の「ビクトリー」、右の「ロワイヤルⅡ」など3種類。どれに乗れるかは運次第。装飾が細やかで色合いもビビッドのため、乗っているだけでゴージャスな気分に浸れます。

所要時間は約25分。クルーズ中、デッキに出て注目いただきたいのが、右手前方の富士山。

湖上から眺める富士山は、また格別です。シャッターチャンスをお見逃しなく！

桃源台港に到着したら、箱根ロープウェイに乗り換え大涌谷へ。乗り場までは歩いて数分の距離です。ゴンドラの定員は18人、運転間隔は1分。多少並んでいる場合でも比較的スムーズに乗車できます。

桃源台から大涌谷へ向かう間にも、富士山の雄大な姿を拝めます。ゴンドラのスピードが意外と速く、苦戦しましたが、何とかカメラに収めることができました。

30分ほど乗車して大涌谷駅に到着。ホームに降り立つと、緑の多い箱根エリアとは思えない摩訶不思議な光景が広がります。

およそ3,000年前、神山の噴火によってできた大涌谷。黄土色の山肌、枯れ木、そして立ち込める硫黄の匂い。寂寥とした風景のなかに、底知れぬパワーを感じます。

名物は“1個食べれば7年寿命が延びる”といわれる延命長寿の「黒たまご」。「大涌谷くろたまご館」で販売されています（4個入り500円）。

それにしてもなぜ、このたまごは黒いのでしょうか。理由は、この地ならではの製造工程にありました。

大涌谷の温泉池で生卵をゆでると、気孔の多い殻に温泉成分が付着し、黒色になるのだそう。ちなみに1時間ゆでたあと、さらに15分蒸して固ゆでにするのは、殻がむきやすく工夫だそうです。

確かにつるっとむけて食べやすかったです。特に硫黄の匂いは感じず、クセのない味わい。さらっと小腹を満たすことができました。

延命長寿の効果をさらに高めるため、向かったのは、神山登山道近くに立つ「大涌谷延命地蔵尊」。延命子育ての地蔵として知られています。

‟地獄谷“とも呼ばれる荒涼とした大涌谷の光景に、弘法大師が心を痛め、この地一体の地蔵菩薩を刻み、人々の救済を祈願したのが始まりと伝えられています。

「大涌谷延命地蔵尊」のすぐそばには、手を清めるための「神泉の湯」が。そのあたたかさに火山の息吹を体感。

富士山スポットとしても知られる大涌谷ですが、この日は残念ながら曇り空で叶わず。晴天の日は「大涌谷くろたまご館」の前にある、大きな黒たまごの左手に現れるようです。

箱根ロープウェイと箱根登山ケーブルカーを結ぶ早雲山駅。ぜひ立ち寄っていただきたいのが、ロープウェイ乗り場を出てすぐの「cu—mo箱根（クーモハコネ）」です。セレクトショップのほか、展望テラス＆足湯、ラウンジがあり、思い思いのひとときを過ごせます。

「cu—moショップ」は箱根ならではのかわいらしいグッズがいっぱい。セレクトのセンスのよさに取材スタッフみんなでショッピングに没頭しちゃいました。
左から「cu—moショップオリジナルてぬぐい（650円）」、宇治抹茶とカフェオレとチョコレートが染み込んだ「箱根花ぼうろ（550円）」、「寄木ピアス（3,300円）」、「琥珀糖（各380円）」。「温泉くつした（550円）」。

店内には、海外郵便も投函できる高さ4m以上の巨大白ポストも設置。オリジナルデザインのポストカードを購入して、切手を貼り投函すると、大涌谷の風景印を押してもらえます。

ショップ横には、フード＆ドリンクコーナーも。

こちらは、「ニューベル（750円）」。スムージーの上に綿菓⼦をのせ、晴天に浮かぶ雲を表現しています。スムージーは、りんご、バナナの味がダイレクトに感じられる、軽めのチーズケーキのような味わい。形も味も思い出に残る1杯です。

いよいよ、旅も終盤。早雲山駅で登山ケーブルカーに乗り換えて、まずは強羅駅へ。乗車時間は約10分。約1.2キロの急傾斜をなめらかに降下していきます。

強羅駅からは箱根登山鉄道に乗車。箱根湯本経由で、小田原駅へと向かいます。注目すべきは、スイッチバック。出山信号場、大平台駅、上大平台信号場の3か所でジグザグに進み、急勾配を登坂、降坂していきます。スイッチバックのタイミングで運転士と車掌が入れ替わるのも見どころのひとつです。

そのほか、出山鉄橋からの風景や、塔ノ沢駅のホームに祀られている銭洗弁天など車窓からの景色も見ごたえありです。
強羅から小田原までは箱根湯本乗り換えで約50分。最後まで“移動”を楽しめるのも、箱根観光の大きな魅力ですね。